夏の和服として親しまれている「浴衣」と「甚平」ですが、その着方や仕様には面白い相違点が存在します。
この記事では、それぞれの特性とその違いを詳しくご紹介します。
「浴衣」と「甚平」の主な違い
「浴衣」は伝統的な和服で、裏地はありません。
これに対し、「甚平」は上下に分かれる形状で、カジュアルで活動しやすい和装です。
両方とも通気性の良い素材で作られており、夏の暑さに最適な装いです。
「浴衣」は夏のオシャレ着
浴衣の起源は平安時代にまでさかのぼります。
当時の貴族が蒸し風呂に入る時に使用した「湯帷子(ゆかたびら)」が原型です。
安土桃山時代には公共の風呂が普及し、人々は湯上りに体からの水分を吸い取るためにこの湯帷子を着用しました。
江戸時代には木綿の普及と共に一般庶民にも浴衣が広まり、現在では夏祭りや花火大会などの外出着としても広く楽しまれています。
浴衣の特徴は以下の通りです。
- 一枚の布で構成され、丈が長い
- 袖は袂(たもと)があり、風通しが良い
- 帯を用いて着こなしを整える
- 足元は、裸足で下駄を履く
- 性別によるデザインの違いがある
「甚平」は夏の快適な和服
「甚平」は、特に男性や子供に人気のある、軽くて涼しい素材で作られた夏向けの和服です。
この衣服は比較的新しいスタイルで、もともとは浴衣を短くしたものとして湯上がりや就寝時に着用されていました。
昭和40年代には膝丈の上衣のみで構成されていましたが、現在では上下別々のスタイルが一般的です。
上衣は帯がなく、着付けを簡単にするための紐が付いています。
そのため、着心地が良く、活動的なシーンにも適しています。
最近では女性向けの甚平も増え、お祭りなどの屋外イベントでの着用も一般的になりました。
甚平はカジュアルな着こなしで受け入れられていますが、その簡素なデザインが幼く見えると感じる人もいるようです。
甚平の特徴を以下にまとめました。
- 半袖の上衣と、膝上丈の下衣(ズボン)に分かれている
- 筒袖で袂がない
- 帯は必要ない
- 大人も着られるが、子どもっぽい印象がある
和服のルールと着こなしのコツ
ここでは、和服の基本的な決まりや浴衣を美しく着こなすための方法などご紹介します。
和服のルールは「右前」
西洋服では男性の服の前合わせは左が上ですが、女性は右が上です。
しかし和服では男女ともに「右前」が基本です。「右前」とは、右側の衿が内側になることを指し、これに従って浴衣や甚平、作務衣など全ての和服が作られています。
着付けで前後がわからなくなった時は、「右手がさっと懐に入る」方向が正しいです。
なお、「左前」は亡くなった方が着る装束のため、生きている間は避けるべきです。
浴衣の着こなしのコツ
浴衣を着る際には正しい着付けが重要です。
特に初めての人は着崩れに注意しましょう。
夏には美容院での着付けサービスもありますし、オンラインでの着付けチュートリアルも参考になります。
着こなしのポイントは、女性は浴衣と帯の色を上手に合わせ、帯を適切な高さにすることです。
また、衿の後ろを少し抜くことで涼しげな印象になります。
男性は帯を臍下で締め、少し前が下がるようにすると洗練されます。
足元は下駄を素足で履き、巾着や信玄袋を合わせるとスタイルが引き締まります。
甚平の由来
甚平という名称は、戦国時代の武将が着用していた「陣羽織」に由来します。
その後、下級武士が着た「甚兵衛羽織」と呼ばれる袖なしの羽織が庶民に広まり、防寒用の「甚平羽織」として進化しました。
最終的に夏のリラックスウェア「甚平」として定着しました。
また、ジンベエザメの名前もこの衣服の白い斑点に由来しています。
「作務衣」の特徴と着用シーン
作務衣はもともと禅宗の僧侶が日常の作業中に着用する服として始まりました。
特定の形があったわけではなく、羽織やもんぺなどさまざまな作業服がこれに含まれていました。
作務衣は甚平と異なり、長袖と長ズボンで構成されており、四季を通じて着用されます。
動きやすいように袖や裾に調節可能な絞りが施されています。
そのゆったりとしたデザインは整った印象を与える一方で、着心地の良さから一般の人々にも部屋着や普段着として愛用されています。
また、職人や農作業、陶芸など、多岐にわたる活動に対応する作業着としても重宝されています。
現在では素材も多様化しており、夏用には麻、冬用にはキルティングや裏地付きの作務衣が存在します。
「浴衣」と「甚平」、「作務衣」の使い分け
浴衣は夏の着物として男女ともに着ることができます。
また甚平は家での夏のリラックスウェアとして最適です。
作務衣は元々僧侶が作業着として着用していましたが、今では一般的な部屋着としても人気です。
和服はそのTPOに合わせて選ぶことが必要ですが、カジュアルに楽しむこともできるアイテムといえます。